杉4小、杉8小、高円寺中の統廃合から子どもを守りましょう
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施設一体型小中一貫校化の震源地
施設一体型小中一貫校化への大きな疑問
高円寺地域における施設一体型小中一貫校化には、区民から大きな疑問があがっていたり、大きな問題点が指摘されています。それに対して、区の説明は十分ではありません。
改めて、大きな問題点を4点にまとめて、質問を届けました。
(1)区長への質問(2016年1月5日に提出)
質問1 より質の高い小中一貫教育、新しい学校づくりをするとして、高円寺中を小学校2校と合体し、小1から中3までこれまでの5倍の子どもたちを一緒の建物に入れます。このような学校の教育的効果は、国の調査でも確かなものはなく、弊害もあります。そのため、小・中学生を一緒の建物に入れる小中一貫校づくりは、全国でもごく少数です。この学校規模を適正な規模とする客観的な根拠・理由も示さていません。高円寺中は、その上、環7道路の脇、運動場が狭く日陰になるなどの悪影響もあります。こんなに多くの問題をかかえている高円寺中なのに、どうしてすすめようとするのですか。
質問2 この一体校は、3年前の意見募集、学校説明会でも様々な不安が指摘されてきました。ところが、区からは、どう対応するのか明らかにされてきませんでした。また学校関係者などですすめてきた「懇談会」でも、こうした問題が教育的知見から検証されてきておりません。それどころか「覚悟をもってやる」「デメリットを幾らほじくり返してもいいことは何も出てこない」などと進められてきました。このように子どもたちにとっての教育的効果、価値などの検証をわきにおき、拙速に、スケジュールを優先させるようなやり方のどこに、どんな価値があるというのですか。
質問3 区は10年も前から、小中学校の統廃合により学校数を減らすことを模索してきました。それは、教育目的ではなく、老朽化した校舎55校の改築費に920億円かかるなどのことから経費を減らす目的からでした。しかし、小中一体学校の新規整備費は53億円(渋谷区の小中一貫校・「新高円寺中」と同規模)かかり、仮に区内23中学校ですすめれば総額1200億円以上と、小中一体校化の方が300億円も経費がかかります。経費を問題にするなら、既存校舎は耐震改修工事が終わっているわけですから、維持補修方式でやれば200億円ですむという区の試算があるではありませんか。どうしてこの方法について比較検討しないのですか。
質問4 こんな杜撰な計画をこのまま進めた後に、子どもたちへの弊害が出たらどうするのですか。どなたが子どもたちへの補償、責任をどのように負うのですか。
(2)説明責任十分果たせない区の回答
上記質問へ1月8日に下記の回答(全文)が届きました。
焦点となる「高円寺中で小中一貫校化をすすめる目的・理由」については、回答ができません。関係者で議論をすすめてきたからということと、学校規模・生徒数から問題ない、そして弊害がないといは言えずみんなで決めてきたから問題ないとしたいようです。
環7道路の近くで騒音・大気汚染などの教育条件・環境が悪くなるのに、どうして新しい高円寺小中校にしなければならないのか、その必然性、必要性について説明もできません。子どもへの教育的、成長的な弊害についての検証が明らかにできていません。
わざわざお金をかけて教育条件・環境を悪くするというのに、その目的・理由も明らかにできないとはどういうことでしょうか。学校をつくる経費は、みんなの税金です。説明責任について、どう考えているのでしょうか。
施設一体型小中一貫校とする新高円寺小中学校は、とにかく異常、非常識、理が通りません。
こんな学校の建設は、すすめるべきではありません。
以下、上記の質問に対する回答文です。
杉並区教育委員会事務局
学校支援課長 ****
学校整備課長 ****
平素から杉並区の教育行政にご協力いただき厚く御礼申し上げます。
平成28年1月6日付でお問い合わせいただきました件につきまして、担当である教育委員会事務局学校支援課及び学校整備課から回答させていただきます。
高円寺地域における新しい学校づくりについては、「区立小中学校適正配置基本方針」に基づき、平成21年度に杉並第八小が適正配置検討対象校となったことを受け、高円寺地域の6校の学校関係者、地域関係者で意見交換を重ねた結果、平成24年3月に、高円寺中、杉並第四小、杉並区第八小の関係者による「高円寺地域における新しい学校づくり計画策定準備会」が発足し、約1年の検討・協議を経て、日常的な連携によってより学習と生活の両面にわたり一貫性のある、3校による施設一体型小中一貫教育校を設置する結論に至りました。
これを受け、教育委員会として「計画案」を取りまとめ、パブリックコメントを実施した上で、平成25年11月に「高円寺地域における新しい学校づくり計画」を策定いたしました。
設置場所については、高円寺中の校地面積や建築規制等から十分な施設計画が可能で、高円寺中を起点とした場合、概ね半径1kmの範囲に、杉並第四小、杉並第八小の通学区域がほぼ納まること等から、高円寺中の校地を活用することとしたものです。
平成26年度からは、この3校の関係者、地域関係者等からなる「高円寺地域における新しい学校づくり懇談会」において、学習環境、教育活動いずれの面からも、高円寺地域の子どもたちにとって「素晴らしい学校」につくりあげていく目標に向かって、精力的に議論・検討を重ねているところです。
なお、杉並区における小中学校の新しい学校づくり(学校の統合)は、学校適正規模を確保することにより、より活力ある教育活動の実施や幅広い交友関係の形成により子どもたちの豊かな人間性を育むため取り組んでおります。
今後とも、高円寺地域における新しい学校づくりをしっかりと進めてまいりたいと存じます。
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以上が、区からの回答ですが、説明責任が果たされていません。というか、肝心な本質的部分については、説明不能です。
しかし、事態だけは刻々と進んでいます。
子どもたちを犠牲にして強引にすすめることによって、最終的に最も喜ぶのは、どなただと思いますか。その方々のために、区が総がかりで施設一体型小中一貫校を高円寺地域で始め、それを突破口にして、新たな学校づくりを全区にすすめようとしているのだ思われます。
みささまには想像力を最大限発揮していただいて、この計画で、最終的に最も喜ぶのは、どなただなのか、考えてみてください。子どもたちのために区政が動くのか、その方々のために区政が動かされるのか、岐路にたたされていると思います。
高円寺中での施設一体型小中一貫校づくりは、そういう本質的な問題があります。
不透明な経過を経る施設一体型小中一貫校づくり
杉並区が唐突に杉4小、杉8小、高円寺中の小中一貫校化を区の方針としたのは2012年2月「高円寺地域の新しい学校づくりの今後の取組方針について」からだ。2012年3月には「高円寺地域の新しい学校づくりの計画策定準備会」(会長=高円寺中・杉山校長)が発足。9月にはその「準備会」で会長が「施設一体型の小中一貫教育校が望ましい」と結論づけた。
区は、住民の意見とは関係なく進めてきたといわれるのが困るようで「(意見交換は)100回を超える」(学校整備担当部長、学校整備課長など)、「高円寺地域の6校の学校関係者、地域関係者で意見交換を重ねた結果」などと説明する。しかし、そんな事実は見つけることができない。見つけることができるのは、区の方針変更、教育委員会との関係、推進体制などの不透明な経過だ。しかも、説明される内容も、教育的視点、子どもからの視点は皆無に等しい。
以下、そのことを順をおって確認していきたい。
(1)目的が小規模校の解消から跡地利用に変わる高円寺地域の学校統廃合
高円寺地域では、学校の統廃合について小学校、中学校のPTAなどの打ち合わせ会が開かれてきた。当初は学校選択制の中で生まれた小規模校問題を解決することを目的とするものであり、その後は学校の統廃合によって生まれる学校の跡地利用を目的とする施設一体型小中一貫校をすすめるものである。
時期的には、おおよそ田中区長の長期ビジョン=基本構想が固まろうとする2011年後半の前後で分かれる。
<小規模校をなくそうとする学校統廃合の流れ>
2009年4月から2012年9月の「意見交換会」などは、杉8小が9回、高南中が5回と、この2校に集中している。それは、山田区政の学校選択制によって生まれた「小規模校」と名指しされた2校を廃校対象校とすることに関係者の理解を得るため「打ち合わせ会」が繰り返された。
しかし杉8小、高南中の保護者から出された中心的意見は「学校選択制をやめれば生徒数の偏りは解決する」と、逆に区が学校選択制の転換を迫られることになった。
施設一体型小中一貫校は、いったんは2011年5月20日の高南中評議委員会に案として示された。その時の案は、施設一体型といっても高円寺中の敷地と杉4小の校庭と体育館を併用するものだった。
その次の高南中の打ち合わせは、それから2か月後の7月15日に開かれた。この時は、5月に提案された小中一貫校案は棚上げされて、「新しい学校づくり案(H29年4月開校)」とだけ提示され、杉3小、杉4小、杉8小、杉10小、高円寺中、高南中の6校の間で小規模校をなくすということが確認された。しかも、学校選択制をやめれば杉8小、高南中の小規模校問題が解決できることもわかる詳しい資料も配布された。
その後、高南中では、この問題を議題に参加対象者を拡げた協議会として、第1回協議会(2011年9月28日、参加者15名)、第2回協議会(2011年10月26日、参加者15名)が開かれた。話し合いの内容は、従来からの適正化の流れ=小規模校を改善する流れの中での話であり、小学校は小学校どうしで、高南中と高円寺中という中学校どうしの再編としてすすめるというのが協議事項だった。
高円寺地域で小中学校問題でこのような話し合いがもたれる中、区政の中心では、2011年10月の第6回基本構想審議会では基本構想答申案たたき台が示さるなど、田中区政の「基本構想」づくりがすすんでいた。このたたき台では「区立施設の再編整備」「(まちの活性化を含めた視点で)施設の複合化や再配置」を進めるという文言が出てきた。2012年1月には、そのたたき台を踏まえた答申案が出来上がった。
このように区政全体の舵が切り替わり、杉8小、高南中の小規模校解消について学校関係者の理解も得らないため、上記の学校適正化=小規模校をなくす学校統廃合の流れは終焉を迎える。
<跡地利用をねらう施設一体型小中一貫校化の流れ>
では、その後の流れはどのようなものになったのか。学校再編=施設一体型小中一貫校化に向け、最初に不可解な動きが始まる。
まず、高円寺中で、高南中から2か月たった2011年7月19日に、わずか3名でのPTA役員と区が参加したPTA役員会がもたれた。杉3小、杉4小、杉8小、杉10小、高円寺中、高南中の6校の間で小規模校をなくすという区の考え方が示された資料が配布されたにもかかわらず、施設一体型小中一貫校の話が多くされるという、奇妙で不自然な打ち合わせが行われた。
高円寺中では、さらに2011年11月に評議委員会が開催された。どういう資格で参加したのかは不明だが杉4小校長も参加。この日は資料は配布されていないことになっているので、何にもとづく話かということは不明だが、「できてしまえばいいものになるのでは」「行政にスピード感がない」などという、子どもたちにとってどうかという話よりも、異常なまでに乱暴な、中味の議論なく何かを推し進めようとする推進論が繰り出された。実際の話は、参加した人にしかわからない議事録のまとめ方がされた。
このように、不可解な打ち合わせが高円寺中で始まる。
2012年2月3日の杉8小の評議委員会になると、「区としての今後の取組方針決定報告」が示された。そこには、杉4小、杉8小、高円寺中の3校で小中一貫校を2017年4月に開校する時期も、検討スケジュールまで明示された。一方、杉3小、杉10小、高南中の3校は「生徒の推移を見守る」と、当初の6校全体で学校の適正配置を考えるとした方針が廃棄された。このような方針変更がされた経過についても、その理由についても説明はない。
3月1日には、「高円寺地域における新しい学校づくり準備会」が杉4小、杉8小、高円寺中の3校の関係者で構成される準備会のメンバーもすでに選定済みで発足した。そして、杉4小と杉8小を高円寺中に統廃合し、杉4小の校庭と体育館を併用する施設一体型小中一貫校をつくるという方向が「たたき台」として示された。
以上、山田区政の下での学校選択制の矛盾が小規模校の発生となって行き詰まりを見せ、それをなくすための学校統廃合の流れから、田中区政のもとでの基本構想づくりが始まり学校跡地の利用を目的とする施設一体型小中一貫校化へと、流れが入れ替わっていった。
(2)2つの不可解な経過
2012年3月に発足した「準備会」に示された区側の案である、杉4小と杉8小を高円寺中に統廃合し杉4小の校庭と体育館を併用する施設一体型小中一貫校をつくると決定した経過を整理すると、2つの不可解な点が出てくる。
<決定過程>
ひとつは、その決定過程である。
教育委員会は、2012年2月3日に、「高円寺地域の新しい学校づくりの今後の取組方針」を発表した。
この方針には、2009年から統廃合の対象とされた杉8小、高南中を中心に意見交換を行ってきたが、関係者の合意が得られないことからとりやめた経過が説明されている。
一方、これからは杉4小、杉8小、高円寺中の3校の統廃合をすすめるとしているが、その理由がかかれておらず、その結論しかない。「準備会」を設置し、その決められた結論への意見を集約していくとして、そのスケジュールまで決められている。
小規模校を解消するための統廃合では、各対象校でPTAの打ち合わせなどが繰り返されてきた。しかし、その後の施設一体型小中一貫校化については、PTAの打ち合わせが経られていない。
杉4小ではなぜか1回も打ち合わせが行われずに「準備会」発足まで来た。しかも、その準備会には杉4小「PTA関係者」1名、「学校関係者」2名、「地域関係者」1名など校長、副校長以外に4名が選出されていた。杉4小のPTAに知らされたのは、「準備会」発足後、しかも学校公開日の休み時間のわずか20分間で、反対意見が集中した。
高円寺中では、区側の出席者がいた打ち合わせが2011年7月、11月に開かれていたのに、区の方針と異なる動きがとられた。しかも、そのことは問題にされていない。高円寺中では、「準備会」に、PTA関係者3名、「学校関係者」1名などが選出されていた。
2012年2月の新しい「方針」が示されたのは、杉8小のPTA評議員だけだった。そこでさえ、区としての今後の取組方針決定報告として、わずか35分の開催だった。5日後の2月8日にはPTA役員会は、わずか25分で区としての今後の取組方針決定報告が報告と質疑が行われた。しかも、「準備会」発足直前の打ち合わせであるにもかかわらず、ここでも「準備会」のメンバーは、どこでどのように選出されたのか、この日のPTA評議言員会の議事録に出てこない。
このように施設一体型小中一貫校へ向かい始める時点の経過には不透明な経過が多い。
2012年4月、杉8小PTA説明会が終わった後、校長、副校長等が「杉3小、杉10小、高南中の推移を見守る理由が『反対が多いため』となるのを避けたい」と意見交換していたことが記録として残されている。ここに、方針変更について区が説明できない一つの理由があることはわかる。しかし、それだけではないだろう。
<教育ビジョン等との関係>
2つめは、区の教育委員会の考え方は、上記のような流れとは別の意味で、一線を画しているように見えるので、整理しておきたい。
教育委員会では、「教育ビジョン」策定に向け、2011年5月から教育ビジョン策定委員会が開かれることになった。2012年3月には、その案が発表されたが、学校の再編整備のことなどでてこない。
2012年8月に発表された「教育ビジョン2012推進計画」を見ても、すでに2010年5月に決まっていた新泉・和泉地区の小中一貫校について改築スケジュールが示されているにすぎず、再編整備も、小中一貫校づくりも、教育方針になっていない。高円寺地域の動きも記載がない。教育方針で出てくるのは、あくまでも「小中一貫教育」である。
2012年度に入って「小中学校新しい学校づくり検討会議」がつくられた。3回の検討会議を経て、2013年3月には「杉並区小中学校新しい学校づくり検討会議報告書」を作成した。こちらの報告書を見ると、小中一貫校は、「地域毎の特性に応じて、条件が整った場合に施設一体型小中一貫教育校の設置の検討を行っていくべき」と、条件を付け、「べき」と義務付けている。
また、この「報告書」には、小中一貫校の取組については、新泉・和泉地区については出てくるが、こちらにも高円寺地域の取組は一切紹介されていない。2012年3月にはすでに準備会が発足、その後も開催され、2012年9月には「施設一体型の小中一貫教育校が望ましい」との一方的な結論づけをした。それにもかかわらず、なぜが、記載されていない。経過を説明している資料の中にも、この動きは記載されていない。
区は2012年1月に方針決定
いろいろ調べていくと、区の教育委員会は、高円寺中、杉4小、杉8小による施設一体型小中一貫校づくりは、2012年1月の教育委員会事務局政策調整会議で決定していた。
この日の議題を要約すると、高南中での協議の状況(統廃合を受け入れない)の結果として説明され、今後の方針として、高円寺中に杉4小、杉8小を統合し施設一体型小中一貫校とすること。そのために準備会を設置することが確認された。
準備会のメンバーがどこで、どうやって決められたのかは、なぜか決定過程がわかる記録はない。
その後、このレールにしたがって、すすめられていくことになった。
高円寺地域の施設一体型小中一貫校化の中味
事細かに追っていく中で、施設一体型小中一貫校へのレールが敷かれた経過には、関係者、住民の意見に関係なく、不可解な経過で高円寺中での施設一体型小中一貫校ありきで向かわされてきたことが確認できた。
その際に、施設一体型小中一貫校とは何か、どういう教育がおこなわれるのか、そのことによる子どもたちへの影響はどうなのか、全国で先行したところがあるが、そこではどんな問題がおきているかなど、高円寺中を施設一体型小中一貫校へした場合にどんな問題点がおきるのかなど、こうした肝心な点について、みんなの共通認識にならないままの施設一体型小中一貫校へのレールが敷かれた。このように、施設一体型小中一貫校化の説明には中味がない。
(1)小中一貫教育の推進については保護者からの評価が低い
区が中味を言えない状況を、もう少し詳細に見てみたい。
田中区政のすすめる「再編統合」以前、山田区政のもとでの「適正配置」を課題にしてきたもとでは、小規模校として名指しされた高南中などで打ち合わせが行われてきた。
中心的意見は「学校選択制をやめれば生徒数の偏りは解決する」というものだが、クラブ活動でチームもつくれない状態が子どもたちにとってどうなのだろうかなどとの意見もでた。そして、田極校長は統合は絶対に必要、考える時期に来ていると最終段階で発言するに至った。
杉並区内の区立中学校は23校、生徒数6300人、区内で平等に割り振れば1学年90人・1中学校270人だ。区立小学校は41校、生徒数18000人、平等に割り振れば1学年70人余・1小学校440人だ。したがって、現状ままでも、学校選択制をやめて学区域を調整することで、小規模校問題は解決できる。適正配置問題は解決してしまう。将来の小学生、中学生になる人口を見ても、大きな変化は当面の間は考えられない。
一方、なんの議論の積み重ねもなく突如、施設一体型小中一貫校化を打ち出した高円寺中では、杉山校長は、高南中との統廃合の対象にするなと突っぱねた。経過の詳細は、上述したとおりだ。
しかし、施設一体型小中一貫校は小規模校問題を解決するものではない。施設一体高円寺中であろうがなかろうが、学校選択制をやめて通学区域を調整しなければ登校する小学生の生徒は同じのままだからだ。
施設一体型小中一貫校化で小規模校を解決しようとするなら、私立学校との生徒の争奪戦で施設一体型小中一貫校へ「行きたい」と思わせるほどの魅力がなければ不可能だ。
では、杉4小、杉8小を卒業した子どもたちのどれだけが、高円寺中に行っているのか。現状の通学区域で見ると、7割程度だ。3割は小から中へとつながらない現実がある。杉並区全体で見ると、小学生18000人(単純計算で1学年3000人)にたいして、中学生は6300人(単純計算で1学年2100人)。仮に小中一貫教育に効果があるとしても7割弱にしか効果は行きわたらない。7割にもならない費用対効果だ。高円寺地域では小中一貫的教育をやっているのに、区内全体と比較しても歓迎されていると言える結果はでていない。
それは、保護者の声にもあらわれている。小中一貫教育の推進の効果にたいする評価は、杉3小では1/4以下、アンケート対象項目の中で最も低い項目だ。杉4小は、3割強で下から2番目の評価だ。しかも、両校とも他の項目に比べてダントツに低い。こんな状況下で、施設一体型小中一貫校化をしても、生徒ははなれていくばかりではないだろうか。ましてや、私立学校との生徒の争奪戦などやっても結果はやるまでもなく明らかだ。
ところが杉山校長は、田極校長の問題提起にたいする考え方もしめしていないし、解決策にもなっていない。適正配置問題と再編問題との関係など、他校での打ち合わせの到達などをどう見るかなどの内容にかかわる打ち合わせはしていない。そのくせ、結論だけはできあがっている。
これは、校長個人の責任ではなく、黒子の区が考えている実態か反映して、こうなっているのではないだろうか。
施設一体型小中一貫校化には、そもそも保護者に理解されるだけの中味がない。
(2)「子どもを利用した実験に反対」(杉4小PTA説明会で保護者)
では、高円寺地域の施設一体型小中一貫校化には、なぜ中味がないのか。目的が施設を統廃合することにあるからだ。どうして、そんなことが言えるのか。次に、その点を見ていきたい。
国の調査によれば、施設一体型小中一貫校は全体の13%にすぎない。しかも、施設一体型小中一貫校の多くは、10学級以下の小規模校だ。
朝日新聞の調査とも合わせると過疎化のなか、地域に学校を残すために生まれたものだ。何か施設一体型小中一貫校としての教育的効果が明らかになって積極的に行なわれているわけではないと思われる。朝日新聞の調査によれば小中一貫校導入目的は半数以上が「学校統廃合の中で計画」としていることでもわかる。調査をした「朝日」では、最後に調査にあたって助言を受けた京都産大教授の「何のために小中一貫教育を進めるのか、行政自身、見つめ直すことが必要だ」との言葉を紹介した。
また、文科省が2014年5月に実施した全国調査を報告している。調査の母数、項目は多いが、たとえば「成果」についてみた場合、それが一貫校によるものの成果なのかどうかがわからない。わかりやすい例でいえば、施設一体型小中一貫校は前述のように、圧倒的に1学年1クラスのような小規模校で実施されているが、少人数の小規模校による成果なのか、一貫校だから得られた成果なのか、肝心な論点にかかわる検証ができないデータである。使う上で注意を要する。
一方、文部科学研究費研究で「小中一貫教育の総合的研究」が行われているが、それによれば、上記の論点にたいする一部の結果がわかる。
たとえば、一貫校は、非一貫校に比べて小学校段階では友人関係、運動、自己価値の能力が低い。精神的健康、学校適応感が低いなど、子どもの発達にとって小中一貫教育は教育的検証が十分されていないといえる。課題として「小6がリーダーの役割を発揮できない」「成長の切れ目の小中の切れ目がうまく機能しない」などがあがっている。結論として、現段階では、子どもの発達にとって小中一貫教育は教育的効果が検証されていないのだ。
小中一貫校・非一貫校における子どもの適応・発達(2)
小中一貫校・非一貫校における子どもの適応・発達(3)
そんなこともあってか、国でも「(保護者、住民との関係では)丁寧に理解と協力を得ながら進めていくことが必要」など注意をよびかけている。
それに比べると杉並区の対応は異常だ。高円寺地域では、時々、説明会場などで区の担当者から「(小中一貫校の)成果がある」との説明がされるが、とんでもない不見識だ。こちらで紹介にしたように、現在とりくまれている小中一貫教育さえ、その効果は定かでない。
まだ、海のもとも山のもともわからない段階で、高円寺地域の子どもたちは実験台にするつもりか。2012年4月の杉4小PTA説明会でお父さんが「子どもを利用し実験することに反対」と言った。こうした子を思うからこその保護者からの心からの訴えが、区内にくまなく響きわたってほしい。
以上、高円寺地域の施設一体型小中一貫校化には中味がない、教育論がないということがわかっていただけたでしょうか。
(4)高円寺地域における新しい学校づくり懇談会の議論
次は、上記で確認した、教育論がない、中味がないということが、例えば「高円寺地域における新しい学校づくり懇談会」では、どのようにあらわているかを見ていきたい。懇談会では、杉並区が関係者とともに実際に施設一体型小中一貫校を具体的に進めてきた。
議事録をこちらでみることができますので、各回ごとについてご参照ください。これが、学校をつくる議論かと驚くような内容が随所に出てきます。
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読んでいくとわかりますが、その目的は施設一体型の小中一貫校化をすすめることを前提にして、スケジュールを優先しすすめ、施設一体型の小中一貫校化の是非を問うものではありません。
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懇談会で意見が出されても決定するのは教育委員会です。「(保護者からの生の声聞いてもらったが)やはり何も変わらない」など発言が出されたりしています。
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議論の進め方でも、デメリットについての指摘が続くと、「デメリットを幾らほじくり返してもいいことは何も出てこない」などとされ、打ち切られます。運動場が狭すぎる、150メートルトラックのコーナーが相当きつい、プール・図書室、運動会、入学式・卒業式は別々か、チャイムはどうなるのか等、様々なことが具体的に提起がされますが、「すべて高円寺中の校庭内でやる」「覚悟をもってやる」などが強調され、なかば強引に議論がまとめられます。
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学童クラブの問題も夜間に1km以上離れている子ども帰宅時の防犯課題も出されています。また、学区域の問題もかなり議論になりますが、区側からは具体的な区域案が出されずに説明されるため「頭の中がぐちゃぐちゃ」などの意見がでることになりますが、教育的な知見からの検証がされることはありませんでした。
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だいたい施設のつくり方についてさえ、図書室の上に体育館があることについて疑問すらでません。廊下が□の形状になること、廊下に死角になるような箇所が随所にあること、廊下が狭くかつその両側に教室があることなど、学校としての設計のイロハができてませんが、そんなことにさえ疑問の一つも出されません。
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環7道路、JR中央線に近いために2重窓とエアコンが欠かせない教室になる。区の考えは、1年中、空調が効いた教室に子どもたちを押し込める問題の重要性を感じていない。むしろ、空調があるから南側に教室がなくても大丈夫、積極的に北側に教室を配置したような説明をしている。しかし、小さいころから空調が効いた教室にいれば自律神経の調整機能が弱まることは常識だ。自律神経の機能が弱まれば、疲れやすく、集中力が続かない子どもになりやすい。集中力が続かない、疲れやすいということは、授業中の先生の話を聞き逃しやすく、学習にも影響する。こうしたことが担当者の間で、本当にわかっていないようだ。
中味がないこと、教育論がないことが、より分かりやすく確認していただけたでしょうか。
高円寺中内に現在の5倍の生徒を押し込むという施設一体型小中一貫校の根本的な欠陥については、計画を見直さない限り解決できない。
(注)「高円寺地域における新しい学校づくり懇談会」とは
この懇談会について若干の補足をしておく。
学校支援課が2014年3月に突如設置したもので、設置の目的は、杉4小、杉8小、高円寺中による施設一体型小中一貫校の開校にかかわり、すすめるための意見を聞くことである。
構成する人たちをどのような基準で選出しているかの規定はない。メンバーは、上記3つの学校から校長、副校長、どこの町会・自治会かは不明だが町会・自治会の代表(4名)、3つの学校から各2名の保護者、学校支援本部の代表2名、定義は不明だが学校関係者9名、高円寺地区地域教育推進協議会の代表1名、教育委員会学校教育担当部長1名の計29名。
会長は高円寺中校長、副会長は杉8小校長とあらかじめ決められている。
2014年3月から2015年12月までの計15回の懇談会開催に要した経費は約83万円。
内訳は校長、副校長、学校教育担当部長を除く出席委員に1回2000円の「謝礼」を支給。その総額は556000円、全回出席していれば謝礼は3万円になる。議事録の作成業者への委託経費として1回平均約4万円弱。2014年7月の渋谷本町学園への視察、2015年5月の杉並区和泉学園への視察にともなうバス借り上げ費用、お茶代、お土産などとして1回約8万円前後、その他ニュース用紙代がかかっている。
杉並区和泉学園、渋谷本町学園への視察報告書は、まとめられていない。
施設一体型小中一貫校化の震源地は
(1)区立施設の再編計画で生まれた施設一体型小中一貫校
上記を読んでいただくと、では施設一体型小中一貫校という名の施設再編計画は、どこからでてきたのかと知りたくなったのではないだろうか。
こちらで「経過」を紹介している。「小中一貫教育」から「小中一貫校」、小中一貫教育が、教育から施設の問題にすりかわったのが、いつかを見つけることができる。
2012年に注目してほしい。その年の4月に「高円寺地域の新しい学校づくりの計画策定準備会」では、反対意見もあるのに「杉4小と杉8小が高円寺地域の新しい小学校をつくっていくことは全員一致で合意」した議事録でまとめられ、9月の同「準備会」では、会長(高円寺中の杉山善之校長)が施設一体型の学校ですすめることを宣言した。(杉並区は、この準備会の議事録を公開していないが、2012年11月21日の区議会本会議録を見ると富田たく議員によって明らかにされている。)
一方、杉並区はこちらを見るとわかるが、その裏では、2012年8月には「区立施設の再編整備の基本的な考え方」の取りまとめるなど、区立施設の再編作業がおこなわれていたことがわかる。
施設一体型小中一貫校が、教育の在り方というよりも、施設統廃合問題として生まれたという経過をみることができる。
子どもの学力をどうのばすか、子どもが生き生きとして学べる学校をどうつくるかという発想からうまれたわけではない。
下記の例は、もっとわかりやすいのではないだろうか。
現在の学校整備担当部長だが、新高円寺小中校づくりを中心になってすすめている。この役職はH27度に新設されたようだが、大竹直樹氏が就任した。彼の前職は、施設再編整備をすすめる担当部長であったり、都市整備部長というまちづくり関係職などだった。
H26年度の教育担当部長も前職はまちづくり担当部長だった。
関係者ですすめてきた実態でかかれたことがどうしておきるのかがよく理解できるのではないだろうか。
今の教育が何をすすめようとしているかを象徴する事実だろう。
(2)区立施設の再編整備の仕掛け人
さらに、学校教育へも影響する「区立施設の再編整備」方針は、どのようにしてできあがってきたのかを確認してみたい。
田中区長の就任は2010年7月だ。区長就任あいさつで、真っ先に上げた看板が「10年ビジョン(基本構想)」だ。年末には、早大・伊藤滋特任教授を会長にした審議会を立ち上げ、2012年1月には「基本構想」を仕上げ、2012年4月に「基本構想(10年ビジョン)」を発表した。
その裏では(2010年12月のこと)、「区立施設の再編整備の基本的な考え方」ができていないにもかかわらず、田中区長はあんさんぶる荻窪問題で国への[働きかけをしていたことが、最近になって発覚した。
余談だがこの問題は、区民にこっそりと区長と国との約束したという点、区民不在の区政という本質的には「密約」というのが適切ではないか。一部に「空手形」という人がいるが、手形ということばで言うなら「ふわたり手形」が適切ではないか。結果的に空手形になったのであり、かりに最初から空手形をだしというならだました、詐欺行為になってしまう。あくまでも本質は区民に内密に約束したことにあり、しかも手形が「ふわたり」になった責任も区民に負わせたという点でも、2重に罪が重いということではないか。区政を私物化しているとも言えるのではないか。
できあがった「10年ビジョン」では区立施設の再編整備が一つの柱とされ、話題の荻窪駅前開発も「戦略的・重点的な取り組み」となった。
田中区長は、区長就任あいさつで、前区長山田宏氏の「(仮称)教育憲章」の看板をおろした。しかし、区立施設の再編整備の名のもとに、施設一体型小中一貫校に踏み出す。
住民の意向を軽視して、強引にすすめられる施設一体型の「新高円寺小中学校」で、区が得ようとしているものは何なのか。
その後、区長は基本構想の実現に意欲を示します。
1年後の2013年9月21日の区長メッセージは、「基本構想の実現を目指して」だが、言っている中心は、区立施設の維持管理に金がかかるので管理コストの削減をするということだ。そして、その翌年、2014年12月1日の区長メッセージ「基本構想の実現に向けて取組を加速化します」だ。
区政全般についてのメッセージは、もっぱら基本構想についてだ。
その基本構想も、問題にするのは区立施設の維持管理費問題だ。
(3)狭い学校内なのに複合化・多機能化が次々と拙速にすすめられるが
「区立施設の再編整備」では、施設の複合化・多機能化によって施設一体型小中一貫校に集約することで、別の場所にある施設を「余分な」施設として廃止しようとしている。
たとえば施設一体型小中一貫校の突破口にされようとしている杉4小、杉8小、高円寺中だが、ここには学童クラブ(500平米)が併設される。「区立施設の再編整備」では一言もでてこなかった特別支援教室も併設する。また、開放会議室、アリーナの近くには開放更衣室、開放倉庫などがあることから、学校の一部を区民へ開放しようともしているようだ。
「区立施設の再編整備」の中では、学童クラブは1施設平均100平米と、施設を限定して狭く見せている。現状の学童クラブは児童館の中にあり、児童館の面積を考えれば、高円寺北児童館には、園庭もあり、建物面積だけでも500平米はある。高円寺中央児童館は600平米だ。それが、杉4小を中心にした高円寺北児童館の学童クラブ、杉8小を中心にした高円寺中央児童館の学童クラブに対応するものにする必要があるにもかかわらず、高円寺中の施設一体型小中一貫校では、学童クラブ用に確保された面積は500平米にしかならない。
学童クラブについて、懇談会の中で学童クラブを併設することについて説明があったのは第7回懇談会だが、区の担当者が来て詳細に説明されたのは第9回懇談会だ。学童クラブの需要が高く、現在は高円寺北と高円寺中央で100名だが、規模としては150名とすると説明した。
規模が1.5倍になるのに、広さは従来の半分では、一人当たりの面積は、1/3に激減してしまう。
学童クラブの問題は狭いところに押し込められる話だけではない、杉8小の生徒を中心に利用されている高円寺中央児童館の学童クラブは、現状とは遠く離れてしまう問題が起きる。特に冬場の暗い時間帯は、親御さんの不安は大きいはずだ。しかし、それを解決するすべは、「区立施設の再編整備」と一体となってすすめられる施設一体型小中一貫校をすすめ、児童館を廃止する杉並区にはない。それについての「懇談会」の中でも、解決されることなく棚上げされてことがすすめられている。
児童館の機能は、学童クラブと同時に、放課後等居場所事業も担っているが、放課後等居場所事業は、施設一体型小中一貫校では80平米ほどの多目的兼放課後教室が用意されている。しかし、児童館の機能が来ることは第12回懇談会で担当係長が否定している。学童クラブ、放課後等居場所事業で児童館の機能を担うつもりなのか、児童館機能をどうするのか、「区立施設の再編整備」書かれていない。こちらでいっているように、児童館は順次、廃止されることになる。これもまた乱暴な話だ。
学校内施設の区民への開放はどうなんだろうか。心配したらきりがないが、施設一体型小中一貫校は狭い敷地にいろんなものを押し込めるので、廊下がロの字となり、死角になる部分も大変多い。一辺の廊下を見ても凹凸が各所にあり、死角部分が多い。そこに、多くの方々が出入りすることになることについてのリスクを不安視する学校関係者は少なくない。しかし、懇談会では、そのことが課題にされ中心的に議論されたことは、これまでの中ではなかった。
さらにもう一つ、特別支援教室・学級も設置される。第15回の懇談会で、区から知的障害特別支援学級を施設一体型小中一貫校で小中9年間通して実施と決定事項が報告された。教室の設置は、この懇談会での話で他の教室をやりくりすることになった。主要な議論は、設置を前提にした技術的な話だ。それ以前に議論されたのは、第9回懇談会で、区の考えも定まらない中での議論だった。ひとつひとつのことが、十分に議論がないことを危惧する。
このように、施設一体型小中一貫校という限られた、ただでさえ狭くなる学校だというのに、次から次へと拙速に、複合化・多機能化が一部の人たちの議論だけですまされ、すすめられて大丈夫なのだろうか疑問がわく。とりわけ子どもにかかわる施設は、これまでの積み重ねもある、学童期の学力、成長の形成に大きな影響を及ぼす、それだけに拙速に事を進めている現状に疑問を抱く関係者は少なくないのではないか。
(4)唐突に押し付けられた施設一体型小中一貫校
ここでの話は、こちらで紹介している内容ともダブル点もあるが、区政全体とのかかわりなかで施設一体型小中一貫校がどうもち出されてきたかを見る主旨で、整理してみた。結論を先に言うと、高円寺中の施設一体型小中一貫校が、教育よりも施設再編問題として上位下達で唐突に行われたことがよくわかる。ほかの箇所で同じ趣旨のことがかかれているが、視点を変えてみても同じことが言えるというにしていただきたい。
<高南中では>
2010年に広く住民を対象に小中一貫校の説明会の後に、施設一体型小中一貫校を杉4小、杉8小を対象に高円寺中ですすめる打ち合わせが、最初にあったのはH23年5月20日の高南中評議委員会だ。ここで示された施設一体型小中一貫校は、施設一体型といっても高円寺中の敷地と杉4小の校庭と体育館を併用する案だった。2010年の住民からの意見への回答でも、同様に併用案を回答している。この時点では、区立施設再編計画、小学校の跡地の売却までは視野に入っていないことがわかる。
その2か月後の7月15日の高南中の打ち合わせは、先に提案された小中一貫校案は棚上げされて、「新しい学校づくり案(H29年4月開校)」とだけ提示された。それは、杉3小、杉4小、杉8小、杉10小、高円寺中、高南中の6校の間で小規模校をなくすという内容だ。しかも、学校選択制をやめれば杉8小、高南中の小規模校問題が解決できることもわかる詳しい資料が配布された。
その後、高南中では、この問題を議題に参加対象者を拡げた協議会として、第1回協議会(2011年9月28日、参加者15名)、第2回協議会(2011年10月26日、参加者15名)が開かれた。この中では、施設一体型小中一貫校については、一言も出ない。従来からの適正化の流れ=小規模校を改善する流れの中での話であり、小学校は小学校どうしで、高南中と高円寺中という中学校どうしの再編し小規模校の解決をすすめる協議事項だった。
<高円寺中では>
一方、高円寺中では、高南中から2か月遅れて2011年7月19日に、わずか3名でのPTA役員会がもたれた。区も参加して、小中一貫校問題は杉3小、杉4小、杉8小、杉10小、高円寺中、高南中の6校の間で小規模校をなくすということが確認されたはずの4日前の高南中資料が配布されたにもかかわらず、高南中での議論を経て確認されたはずの、その合意事項については議論もされずに施設一体型小中一貫校の話がされるという、奇妙な不自然な打ち合わせとなった。
高円寺中では、さらに2011年11月に評議委員会が開催された。資料は配布されず、議論も「できてしまえばいいものになるのでは」「行政にスピード感がない」など、子どもたちにとってどうかという話よりも、異常なまでに乱暴な、中味のない推進論が繰り出された。こちらも、奇妙な不自然な打ち合わせとなった。
<2012年に入ってからの動き>
2012年2月3日の杉8小の評議委員会では、「区としての今後の取組方針決定報告」がされた。そこでは、杉4小、杉8小、高円寺中の3校で小中一貫校を2017年4月に開校する時期とともに、検討スケジュールまで明示された。また、杉3小、杉10小、高南中の3校は「生徒の推移を見守る」と6校で考えるとした当初の方針を廃棄したことが示された。ここに至るまでには、上記のほかに学校関係者が集まった打ち合わせ記録がないというのに、奇妙で不自然な流れだ。
杉4小に至っては、PTA、保護者もまったく無視されて、小中一貫校化が「区としての今後の取組方針」として決められた。高円寺中についても、前年11月のPTA評議委員会は開かれたものの資料も配布されておらず、その後の打ち合わせもないまま「区としての今後の取組方針」が決められた。ごく一部の密室のなかで、ことが進められるという極めて異常なやり方だ。
<唐突に「高円寺地域における新しい学校づくり準備会」発足>
3月1日には、「高円寺地域における新しい学校づくり準備会」が3校の関係者で構成される準備会のメンバーもすでに選定済みで発足した。このメンバーにはPTAなどの打ち合わせが開かれてきていない杉4小の関係者も選出されていた。お膳立てされたレールの上を、走らされるにすぎない「準備会」発足だ。
このように杉4小、杉8小、高円寺中を統廃合し、高円寺中で施設一体型小中一貫校を開校するという話には、関係者との合意などといえるものは、ひとかけらもなく、密室で進められて突如、上から押し付けられた。これが、2011年後半から急激に動いてきた実態だ。(なお区の説明と見比べてほしい)
この時期、区の中枢部では基本構想づくりがすすんでいた。2011年10月の第6回基本構想審議会では基本構想答申案たたき台が示された。このたたき台では「区立施設の再編整備」「(まちの活性化を含めた視点で)施設の複合化や再配置」を進めるという文言が出てきた。2012年1月には、たたき台を踏まえた答申案が出来上がった。
また。教育関係では、「教育ビジョン」策定に向け、2011年5月から教育ビジョン策定委員会が開かれることになった。2012年3月には、その案が発表されたが、学校の再編整備のことなどでていない。2012年8月に発表された「教育ビジョン2012推進計画」を見ても、すでに2010年5月に決まっていた新泉・和泉地区の小中一貫校について改築スケジュールが示されているにすぎず、再編も、小中一貫校づくりも、教育方針になっていない。教育方針で出てくるのは、あくまでも「小中一貫教育」である。その後、2012年度に入って「小中学校新しい学校づくり検討会議」がつくられた。
このように、区の中を見ても、施設一体型小中一貫校づくりは、全体の合意のもとで進められた形跡は見られない。
施設一体型小中一貫校化の目的は経費削減?
施設一体型小中一貫校化の震源地は、区立施設再編整備計画であることを上記で確かめた。
次に、学校の統廃合という本質をもつ施設一体型小中一貫校化の目的について、山田区政時代から順を追って見て行きたい。
(1)施設一体型小中一貫校化では経費は削減どころか増える?
山田区政の時代は、杉並区立小中学校適正化配置基本方針で、学校を減らし教育経費を削減する方針を明らかにした。
その中で具体的にされた数字は、学校の改築には2007年から25年間で920億円かかること、学校を維持するための費用が小学校が9400万円/校、中学校が8300万円/校、年間58億円(現校数で筆者が換算)かかること、施設改修費に年間10億円、20年間で190億円かかることを問題にし、学校の「適正化配置」=学校減らしが必要だとした。(当時の「適正化配置」も教育目的ではなかった。)
ここで言う、「学校を維持するための費用」とは何か。定義づけていないが、要するに学校を維持補修するようなハード的費用を除いた教員、人件費、給食、教材などにかかる運営経費ということになる。
学校を減らす目的は、区の支出のなかで3番目に多い教育を狙い撃ちにしたものだ。しかし、「適正に配置」で、どのようにして、いくら削減しようとしているかは見えない。実際、経費を減らすことができるのかも明らかな根拠も示されていない。これでは、どこに迷い込んでいるのかわからないのに、確証もなくあっちへ行けば助かりそうだからいってみようと言っているようなものだ。
学校の運営に多くかかるといっても、無駄なものがあれば使い方を改めて区民のためになる使い方に方向転換することには異論はなく、大歓迎だろう。しかし、学校教育は社会にとって必要不可欠な施策だ。むやみやたらに削減すれば、社会の力が失われることになる。学校施設の維持補修経費も、これまでつくったものを適切に管理、維持補修して、壁がはがれて子どもがけがをする事故など起きないようにしながら長く使うことは良いことだ。
それでも「教育費を減らせ」ということになれば、教育の質が落ちる。金のために子どもが犠牲になり、自治体としては自滅の道にすすむことになる。「維持管理経費を減らせ」となれば、学校の数を減らすか、適切な維持管理から粗雑な、手抜きの維持管理に切り替えなければ、できない話だ。
その後、田中区政になり、学校減らしの考え方が、「区立施設再編整備」と連携する方式に変更された。学校だけではなく、他の一般区立施設と合体させた学校にするというのだ。
(注)山田区政と田中区政の学校経費問題
山田区政が進めてきたのは「適正化」による学校減らしで、施設一体型小中一貫校化は進めていない。
山田区政の学校減らしと田中区政の区立施設の再編整備と合体させた学校減らしの関係は、上記の施設一体型小中一貫校化の震源地を参照していただきたい。
実は、田中区政になって打ち出された「杉並区教育ビジョン」「杉並区立小中学校新しい学校づくり推進基本方針」の中に限ってみると、経費について問題にしていない。
しかし、ここでこの問題を展開すると複雑になるので、このことを承知の上で以下、続けて参照していただきたい。
次に、問題を整理するために、施設一体型小中一貫校で経費削減ができるのかどうかを見ていきたい。
施設一体型小中一貫校で、学校の運営経費が減らせるのか。運営費は、生徒の数が今後の何年もの間は減らず漸増すること、区が削減で生まれた財源は「学校教育の充実」に役立てると言っているので、減ることはないはずだ。
一方、施設一体型小中一貫校で、維持管理経費を減らせるのか。杉4小、杉8小、高円寺中を一つに統廃合すれば、単純に計算で2校分に近い維持管理費が節約できる。しかし、施設一体型小中一貫校は新たにつくることになるので、新規整備費との差し引きの計算が必要だ。
杉並区内で初めての施設一体型小中一貫校である新高円寺小中学校の整備に、一体いくらかかるのか区議会、「懇談会」での議論、「基本方針」を見ても見積もっておらず不明だが、施設一体型小中一貫校を高円寺中と同規模で行った渋谷本町学園は53億円かかっているので、この方式でやれば、区が比較してきた「今後の改築費の想定」920億円を300億円も上回ってしまう。一方、維持管理の削減は年に小学校2校と中学校1校で施設一体型小中一貫校化を進めたとしても、10年間でも12億円程度しか削減できない。
だとすると、差し引きでは経費の削減どころが、経費が増えてしまう。仮に、経費は減るというのであれば、生まれた財源を「学校教育の充実」にあてないことにならないか。あるいは、杉4小、杉8小、高円寺中の施設一体型小中一貫校化はいったいいくらかかるのか、違いは何でいくらかなど、区民への具体的な説明が必要だ。
区は、この矛盾について口を閉ざし、説明不能状態だ。
(2)区立施設の再編整備の狙いは何?
上記でふれたように、施設一体型小中一貫校化は、教育目的でない、経費削減にもならない。しかも、恣意的、拙速にすすめている。ではなぜ、これほどまでに施設一体型小中一貫校化にこだわり、すすめるのか、疑問がわく。
田中区長になってつくられた「区立施設再編整備」は、従来の統廃合計画とは違う大きな特徴がある。一つは各施設を「複合化」すること、たとえば、学校であれば学童クラブを一体化して学童クラブの経費を削減することを計画していること。
もう一つは、統廃合によって生み出された跡地の売却、「民間の活力の導入」(これが何かを示していないが跡地へ民間活力の導入であれば「再開発」が考えられる)等を考えていることである。杉4小、杉8小についても、その跡地について活用策を検討することになっている。そこには、跡地の民間への売却も含まれる。
「区立施設再編整備」では、小中学校の改築・改修経費は30年間で1825億円、20年間では1332億円をいかに減らすかを課題にしている。これは2004年に発表した小中学校適正配置基本方針で示した20年間で1110億円と比べても大きく、整合性がとれていない。その違いついて説明はない。以前も乱雑だったが、さらにひどくなった。現状のままでは経費が増えるということを、具体的な計算根拠もなく、より大きく見せようとしている。
その一方で、杉4小、杉8小、高円寺中を統廃合してつくる施設一体型小中一貫校に整備費も明らかにせずに、財政効果を云々することができるはずもないのに、まるで財政効果があるかのように書かれている。施設の面積を減らすことで、経費が減るとしているに過ぎない。こんな論理が成り立たないことは、上段の(1)に書いた通りだ。
区は。とにかく経費を減らそうというのだから、跡地に区立施設を残すこと、あるいは新たに異なる区立施設をもってくることは考えていないことになる。たとえば、「高円寺地域における新しい学校づくり懇談会」でも、懇談会の議論の中で高円寺中だけでは狭いので杉4小も使うようにしようという意見がでると、「すべて高円寺中の校庭内でやる」と仕切られてしまう。
以上の点からすると、施設一体型小中一貫校の狙いには、それによって生まれる杉4小、杉8小の跡地の活用・売却にあると考えられる。小中学校の41haの用地のうちの統廃合で浮く、学校の跡地=区民の財産である公有地が狙われている。
開発・施設の統廃合の犠牲にされる子どもたち
荻窪駅前南の再開発による区施設と税務署の交換をめぐっては、区長による国との「密約」が、住民団体による情報公開請求でわかったようだ。
この開発では、あんさんぶる荻窪の荻窪北児童館などが廃止される。
この開発に税務署を取り込むために、区長が税務署の建て替え工事を一時中止するよう財務省に要望書を提出していた。そこには「国に賃料負担が生じない方法」するおまけがついているとか。その後、要望書の中身がチャラになったため、その埋め合わせに財産交換が浮上したようだ。特別養護老人ホーム建設に必要な土地確保のための土地交換だったとされたきた区長の説明の根拠が崩れた。あんさんぶる荻窪が、区長が勝手に「密約」した失敗のつけとして、差し出されたという恰好だ。「区政の私物化同然」と言う人もいるかも知れない。
開発・施設の統廃合で子どもが犠牲にされている点で、上記の開発は高円寺中問題は酷似している。
基本設計について周辺住民へ説明したが、見直しを求める声が殺到
1月29日に区が、杉並区まちづくり条例にもどづく、説明会を開催しました。
出席者からは、設計に関する事項はさておき、小中一貫校をつくることそのものについて見直しを求める声が殺到しました。区は、「工事への理解」を目的として説明会を開催したものの、住民からは「計画の見直し」という根本を迫られた形になりました。
声1:教室のほとんどが北向きと東向きだ。日光を浴びることを考慮していない。
声2:子どもたちが増え、休み時間に遊べる場所がすくなくなる。
声3:高円寺中は2重窓でエアコン漬け。小1から9年間も通うため、子どもたちは良質の睡眠がとれない。
声4:小中一貫校のメリットが不明だ。小学校の教師だが、これではカリキュラムが組めない。休み時間は校庭で全員が遊べない。
声5:子どもたちを犠牲にして、お金と時間をかけ、これ以上すすめるべきではない。
声6:時間割の異なる小学生と中学生が一緒の校舎では、子どもの負担が大きい。
声7:一つの校舎に小中学生を一緒にするのは問題だ。
声8:これは誰のための学校か。教育委員会のみなさんは、お子さんを9年間、ここで勉強させたいか。
声9:今でも校庭が狭いのに、さらに狭くなる。まじめに、子どものことを考えているとは思えない。
声10:住民はこの学校計画に非常に心配している。見直すべきだ。
などなど
住民からの理解が得られていない、おしつけ計画であることがわかります。
2015年11月30日に審議された陳情
陳情主旨:杉並第4小学校、杉並第8小学校、高円寺中学校の統廃合を伴う高円寺小中一貫教育校計画を廃止すること
陳情j理由:前年度議会に1630名の賛同署名を得て杉並第4小学校の存続を求める陳情をいたしましたが、残念なことに全て審議されずに廃棄されました。
私たちは、現在行われている地域に則ったきめ細かな少人数教育こそが大切で、小学校と中学校では望まれる環境が異なると考えます。
未就学児が急速に増加している高円寺地区で既存の小学校を廃校にするのは、近い将来に禍根を残すものとなります。税金の無駄使いでもある3校統廃合による小中一貫校計画の廃止を求めます。